第8章 盗まれたのは
…本物の王子様ですか、貴方は。
そう心の中でツッコムのは許して欲しい。
それ程までに探はキザだなと思ったまでだ。
いや、悪い意味で言ってる訳ではなく、それが様になってるのだから良いと思う。
私の中のキザ選手権で怪盗キッド、安室透、沖矢昴(中の人の方ではなく上っ面の方)に次いで白馬探もエントリーされた。
これは…誰が勝つか想像出来ない←
っと、思考が大分ズレてしまった。
頭の中を一旦クリーンにして、ニコリと微笑む。
『引く手数多の探さんにエスコートしていただいて私も光栄です。
今日はよろしくお願いします』
「…」
あれ?反応がない。
変なことは言ってないのにどうしてか探さんが固まっている。
あれか、そんなに私の笑顔が変だったのだろうか…それはそれで悲しい。
笑顔が攣りそうになってきたので、一言『大丈夫ですか?』と問うとハッとした顔になったが、それも一瞬でいつもの顔に戻った。
「すみません」そう言って手を離し隣に立ち直る彼。
一体なんだったんだ、そう思うが問いただす必要もないので会釈だけする。
すると父と母が私達の前に並んで歩いてきたのが視界に入った。
「さて、今日の主役にはコレがないとな」
そう言って取り出したのは1つの大きめなジュエリーケース。
それをパカっと開けて手に取り見せてくれた。
『これって…』
父の手の上にはあの人魚の涙があった。
見る角度によって色が変わってとても神秘的な宝石だ。
思ったよりも実物の方が大きかった。
その石を際立たせるかのようにネックレスのチェーン部分に沢山の大小様々なダイヤモンドで埋め尽くされている。
え、いやコレ一体おいくらなんでしょう。
そう思うのは私だけではないであろう。
「そう!お前と一緒に主役をやる人魚の涙さんだっ!
お前はコレを着けて今夜一日過ごしなさい」