【安室透】奇妙な客人がやって来るのは、この霊感のせい?
第1章 奇妙な依頼人【出会い】
*
*
(なら、どうしてわざわざ安室さんの肩に乗ってまで疲労させて困らせようとしてるんだろう……)
横でコナンが私の濁した言葉に対して、腑に落ちなさそうな態度を取っているが全て無視をして、改めて安室さんの横顔をジッと見詰めた。
髭の幽霊も安室さんと一緒になって小説を読もうと頭上から内容を覗いている。
髭の幽霊が安室さんとどういう関係で、傍から見れば仲の良さそうな二人……には見えなくもない。
だが、髭の幽霊が安室さんとどういう関係で、どういう経緯でそのような行為をしているかは知らないが、安室さんを困らせていることには変わりはない。
いっそお祓いでも勧めてみようか──そう考えた瞬間、安室さんが目を細めて此方に聞こえないくらい小さな溜息を吐いているのが見えた。
その細められた蒼い瞳は小刻みに震えている。
疲労で仕事にも影響が出ているとコナンが言っていたが、もしかすると私が思っているよりも思い詰めているのかもしれない。
(……いや、違う)
そこまで思考し、私はその考えを切り捨てた。
そんな単純な悩みではないように見える。
あの吸い込まれそうな程綺麗な蒼の瞳の奥には、コナンの言う安室さんの悩みの他に、もっと深刻な悩みがあるように思う。
その悩みとあの髭の幽霊がどう関係しているのかは分からないが──
「……さん………栞さん!」
「へっ、あ、はいっ!すいません!……何でしょうか?」
夢中で思考に浸っていたせいで急に呼ばれて、咄嗟に出た声が裏返ってしまった。
挙句には恥隠しで思わず大きな声を上げてしまった。
コナンが呆れた顔で私を見ているが気にしないことにする。