【安室透】奇妙な客人がやって来るのは、この霊感のせい?
第1章 奇妙な依頼人【出会い】
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「この部屋は明らかに一般の客が入れるような場所には見えませんが、この本棚の本は……」
「え、ええ…その通りです。
ここは私の休憩部屋みたいなお部屋で、今日のように人があまり来ないような時間帯にはそこの本棚の本を読むことが多いんですが……
昔からの癖で集中すると紙の端を折り曲げちゃうんです。それにどうしても治らなくて……
売り物だからそんなことをする訳にもいきませんし、気にするくらいなら自分の本を持ってこようと、この部屋を休憩場所にして本棚も持ってきちゃいました」
扉の前で話させるのは申し訳ないということで、受け付けの奥にある部屋にコナン達を招き入れたのだが、安室さんの言う通り一般の客は入れないようになっている。
あの萎れたページが重なる小説の数々を売り物として出せるはずがない。
見せるとしても、見る側も見せる側もあまり良い気にはなれない。それにこの部屋にある本は全て売り物として別にあるから大丈夫だ。
「だからこの前ここで読んだ小説のページがしわくちゃだったんだね」
「そうそう」
コナンが私の店に訪れる度にこの部屋に入れるのだが、この前は暇潰しとして一緒にシャーロックホームズの小説を読んで語った日があったのを思い出した。
彼がホームズを好きなように、私も同様ホームズの小説が大好きだ。もちろん、それ以外にも推理小説は読み尽くしている。