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【安室透】奇妙な客人がやって来るのは、この霊感のせい?

第1章 奇妙な依頼人【出会い】












古藤栞はパタリと本を閉じた。


 パノラマ書房で一人で働く私は、暇な時間にこうして本を読むことが多い。

 『幽霊人命救助隊』──この小説を読む度に私は考える。
 もしも男性の頼みを断っていたら、あの後はどうなっていたのだろうかと。

 私が目撃したのは、正に彼女が首吊り自殺を図る直前だった。断っていたら間違いなく彼女はそのまま首を吊って死んでいたに違いない。愛する彼からの手紙を読むことなく──そう思うとゾッとする。

 私の選択が一人の人間の生死に関わったかもしれないのだ。だからこそ、この小説を読む度に心の底から安堵する。

 あの一件が無事に終わり、男性の幽霊に伝えようと交差点付近に向かったが、彼の姿は何処にも見られなかった。あれ以来彼の行方は分からない。

 もしかすると、自分の手紙を読んで生きることを決意した彼女に残す未練が無くなり、成仏したのかもしれない。


 ──ただ、幽霊に関する出来事に巻き込まれるのはこの一件では終わらなかった。いやむしろそこから始まったとさえ言える。

 インスタントコーヒーを啜りながら、ふいに窓の外へと視線を移すとガラス張りの扉越しに店内を覗いている一人の眼鏡の少年が目に入った。

 その姿を見て全身から血の気が引いていく。

 その少年と目が合うと、彼は嬉しそうにニッコリと微笑み、扉を開けて店内へと侵入してきた。


「いらっしゃい……コナン君」
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