【安室透】奇妙な客人がやって来るのは、この霊感のせい?
第1章 奇妙な依頼人【出会い】
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安室さんは持っていた小説を本棚の元あった位置にしまった。
一瞬だけ本の表紙が見えたが、それはコナン達が来る前に私が読んであの小説だった。
「なるほど……あれ。おかしいな。この本ページが捲れない……」
安室さんは本棚からまた別の本を取り出してページを捲ろうとその本と格闘し始めた。
安室さんの言葉に反応してすぐ様コナンは駆け付ける。その本は辞典のように分厚く周辺の小説よりも一回り面積が大きいように見える。
(ページが捲れない本……ページが……)
頭の中で数回復唱してからハッと気がついたが、その頃には安室さんが“箱”を開けていた。コナンが興味津々に中身を覗いている。それも無理はないだろうと思った。
「…ホームズの初版本ですよ。私が幼い頃、母からその箱と一緒に誕生日プレゼントとして貰ったんです。私が貰った初めての小説として」
「栞さんのお母さんって……」
「コナン君には言ってなかったかな。数年前に私とこの店を残して事故で死んだんだよ。警察には不運な事故って言われたけど……」
「それは……ご愁傷様です……」
「……でも、この本とこのお店のお陰で私は寂しくないんです。私にとって大切な宝物ですから」