第1章 *御幸一也 『手取り足取り』
貴方side
「なぁ、なんで不機嫌か分かる?」
隣に座る御幸に、ここなんだけど...。と聞こうとすると、不意に尋ねられた。
『え、いやわかんない。』
成績が悪かった事がよっぽどダメだったのか。
それなら沢村や、降谷くんはどうするんだ。
「マジでわかんない?」
少し怖い顔をしている御幸に焦りを感じる。
『う、うん...。』
はぁーーー。とわざとらしくため息をつく御幸に、首を傾げる。
「普通、彼女が他の男と二人きりだったら嫌だろ。3人とかならまだしも...。」
そうか。それでこんなに不機嫌だったのか。
御幸が他の女の子と二人きり...確かに嫌だ。
『でも、倉持じゃん?気にしなくて良くない?』
嫌と言っても、倉持だ。仲良い男子なら大丈夫でしょ。
「分かんねぇなら教えてやるよ。手取り足取り、な。」
そういう御幸の目が、眼鏡越しに怪しく光る。