第1章 春
『・・?』
「僕は、夢翔ちゃんを泣かせないよ。」
『ふふ。分かってるよ。』
そう言って笑うと、ふわっと抱きつかれた。
『っお?!出久くん?!』
「分かってない。
分かってないよ。夢翔ちゃん。」
柔らかく包まれた腕に少しだけ力が入った。
「っ夢翔ちゃんがが僕の手を握って寝ているとき、ぼ、僕は夢翔ちゃんに触ろうとした。
さっき、抱きしめられたときは、死ぬほど心臓が動いて、なんていうか、その、
幸せだった。
い、今もだから、僕はすごく幸せで、
だから、えっと、なんていうか」
ごにょごにょと考えがまとまらなくなっているような出久くんに笑いが出た。
『抱きしめてくれたのは出久くんなのに、私よりも出久くんの方が焦ってるなんて』
くくくっと笑う彼女にあ~やっぱり僕すごいかっこ悪い。離れたくない。今の顔を見られたくないなんて思った。
『でも、出久くんに抱きしめられるのは、安心する。
なんていうか、良い匂いする。』
「におっ!?!!!」
一日中着ていた制服・・ッ!!!
出久くんの耳が真っ赤になっているのを見て、さらに笑いが出た。
「っ・・・あ、安心じゃ、だめなんだ」
『??』
「僕は、、夢翔ちゃんに」
ドキドキしてもらいたい。