第1章 春
『じゃぁ今晩はカレーにしよう。辛え。だけに。』
「っは。クソ寒いこと言ってねえでさっさとつくんぞ。」
渾身のだじゃれを軽くスルーして、あたかも自分の家かのように冷蔵庫を開けたりして下準備を始めた勝己くん。
勝己くんは本当に才能マンで料理の腕もイイし、手際も良い。
『勝己くんがお嫁さんだったらなぁ』
「ぁ”?」
『なんやかんや言いながらたくさん家事手伝ってくれるんだろうな。』
ニシシと笑うと、グイッと手を引っ張られた。
「何で俺が嫁なんだ。嫁はお前だろうが。」
腕を引かれて引き寄せられると、案外体の距離は近づいた。
『だって、勝己くんの方が料理とか上手だし、』
「そんなもん関係ねえ。夢翔の作る飯の方が俺はくいてえんだよ。」
分かったらさっさと手動かせ。
そう言ってまな板と向き合った勝己くん。
・・・・なんだあの台詞。
さっきまで落ち込んでたくせにっ・・・!!
そんなことを思いながら赤くなった顔を隠すように俯いた。
勝己くんがメインのカレーを作ってくれているから、私はサラダでも作るかな。
お互い、料理を完成させて器に盛り付けた。
『ねぇ勝己くん』
「ぁ?」
『何でこうもカレーは赤くなってるの?』
「辛え方がうまいからに決まってんだろ」
『・・・私辛いの苦手なんだけど』
「んなもん先に言えや」
すでに器に盛られたカレーを見る。明らかに辛い。だって匂いが辛いもん。役割・・・反対にすればよかった。
「食ったら世界変わるんじゃね?」
『天に召されるという意味で?』
「かもな。」
そんな冗談を言い合うと、勝己くんはフッと笑顔を見せた。