第1章 春
私の家に着くと、勝己くんはまるで我が家のように足を進めた。
『・・?勝己くん、なんか全然しゃべんっ』
ギュ。
急に話さなくなった勝己くんをのぞき込むと、急に抱きしめられた。
『・・どうしたの?』
「うるせえ。黙って抱かれてろ。」
そう言うと腕に力が入るのが分かった。
震えてる。
勝己くんはプライドが高い。出会って数日で、それが分かると言うことは、本当に心底プライドの塊なのだと思う。
今は、とても傷ついてるように見える。
”なんで泣いてるの?!”なんて声を掛けたらと余計に傷つくんだろうな。
そんなことを考えながら勝己くんの背中をさすった。
しばらくすると、勝己くんの震えも止まり、「子ども扱いすんじゃねえ」と悪態をついてきた。
少しは元気になったみたい。
『勝己くん、夕飯、何食べたい?』
「んなもん辛かったら何でも良いわ。」
『ん、勝己くんて辛いのが好きなの?』
「当たり前だろうが。食堂でも七味とかぶっかけてんだろ。」
そう言われると、あ~そうだったっけ??と考える。
人様のご飯なんてそんなまじまじと見ていない。
『そんなにたくさんかけるの?』
「その方がうめーだろうが。」
そう言われて、うーーーん。と何やら頭を傾けた夢翔に
「何が言いてんだ」と睨みをきかせた。
『だって、この前わたしが作ったご飯、何も文句言わずに食べてたでしょ?』
というと、一瞬目を見開いて、うるせえ。と押し黙った。
きっと勝己くんは図星とか突かれたら「うるせえ」しか言えなくなる語彙力が極限まで下がるタイプなんだろう。
「ぁ”?」
『え!!心の中!!心の中だよ!!!』
何かを察したのか、めきめきと頭を鷲掴みされた。痛い。