第10章 日常が来ない
「ベルモットやウォッカさえも知らないことをどうしてあなたが知っているのかを教えていただいても?」
バーボン「僕は情報収集に長けているんですよ。こう見えてもね。」
ふむ……。教えるつもりは無いということか……ならば。
「そうですか。なら交渉は決裂です。」
バーボン「ほぉー?ジンの情報は要らないと?」
「えぇ。私もジン専属と言ってもいいほどの情報屋ですから。自分たちのメンバーの秘密1つや2つ自力で得ますよ。」
バーボンは残念と肩をすくめ、珈琲を口にする。
「今日はそれだけですか?」
バーボン「いいえ?」
「じゃぁ、なに?」
バーボン「気になったことが1つ……。君の家の周辺にこんなヤツがウロチョロしてましたよ。」
バーボンはテーブルの上にスっと写真を出す。
その写真の男に見覚えはなかったが、男が持っていたトランプを見て確信する。
ダメだ、今ここでバーボンに知られるわけにはいかない。巻き込んではいけない。これはジンにぃと私の問題なのだから。
「誰かしら?新手のストーカー?」
バーボン「知らないんですか?」
「えぇ。」
バーボン「おかしいですね。この写真を見た瞬間貴方は目を見開いた。そう、驚くようにね?それでも知らないんですか?」
「本当に知らないわ。驚いたのはその人と似ている人の知り合いがいるからよ。でもその似ている人とは顔つきがちょっと違うわね。」
まじまじと写真を手に取って見つめる。
その男が持っていたトランプはスペードの8。おかしい。本来あの組織のやり方としてはスペードのエースから始める。それなのに何故スペードの8から?郵便受けや家にトランプのカードなんてどこにも見当たらなかった。
「まぁ私は情報屋でジンにいろんな情報を売っていましたから、その恨みとかじゃないですか?」
私はバーボンに写真を返す。
バーボン「そうですか。」
バーボンは何か考え事をし、口角を上げる。
バーボン「いい事を思いつきました。この男を捕まえましょう。」
「な?!」
バーボン「おや?怪しいヤツを捕まえないと組織の情報を知られていたら大変じゃないですか。しかも貴方はジンのお気に入りなんですよ?」