第9章 楽しい楽しいお酒の時間
沖矢「やはり貴方は組織に深く関わらないべきだ。」
「ご忠告どうも。でも私はもう戻れないから。」
私は俯いて両親のことを考える。
両親が殺害されるまでは普通の家族のように過ごしていた。誕生日やクリスマス、お正月だって他の家とは変わらずお祝いしたりして楽しんだ。変わってたと言えば兄がほとんど家にいなかったことぐらい。
そして両親の殺害の真相を知りたくて調べた。ジンにぃに聞いても 知らねぇ としか言わないから自分でくまなく調べた。
時間はかかったけど、両親やジンにぃが嘘をついてでも隠したかったことを知った時は驚いた。
自分の両親は二人とも情報屋で、いろんな人に情報を売買していた。それは警察関係だけでなく闇の組織の人達にも。
そんなある日、両親はトランプという組織のメンバーとなった。そこで幸せの歯車は外れてしまった。
トランプという組織はトランプカードによって地位を示し、役割を与えていた。両親の与えられたトランプはクラブのキングとクイーン。そんな高位にいた両親が殺されなければいけなかった理由は、知ってはならないことを知ってしまったから。
何を知ってしまったのかはわからないけれど、きっと知られては不利になることなのではないかとは思っている。
そして、その情報は全て私の中にあるということ……。
両親が亡くなる前、私は左手の親指のつけ根辺りを手術した。両親は腫瘍が見つかったからー……とかなんとか言っていたけど、きっと違う。この手術で大切な情報を私のこの左手に埋め込んだんだ。実際に確かめた訳ではないけれど、手術後母は泣いていた。
沖矢「……さん。渚さん!」
「へ?!」
突然名前を呼ばれ、驚きを隠せぬまま沖矢さんを見た。
沖矢「何故……泣いているんですか?」
「え?」
ポタッとひと粒の雫が落ち、頬に手を添えると濡れていた。
「や、やだ……なんで。」
悲しいわけでも悔しいわけでもない。何度も手で涙を拭うが涙は溢れて止まることを知らない。
おかしいな。
ジンにぃ以外の人の前で泣いてしまうなんて。
「っ…、すいませんっ。」