第9章 楽しい楽しいお酒の時間
「……。」
家に案内され、わけも分からずリビングのソファに座らされて15分が経過した。その間、沖矢さんはお酒やらおつまみの準備をしていた。
沖矢「何を飲まれます?」
「い、いえ……おかまいなく。」
沖矢さんはバーボンと書かれたお酒をテーブルの上に置いて、ソファに腰をかける。そして、ロックグラスに丸い氷とバーボンを入れた。
沖矢「貴方もどうぞ?」
そう言って、沖矢さんは自分と同じようにバーボンをロックで用意してくれた。
「あ、ありがとうございます。」
用意されたグラスを受け取る。
なぜ赤井さんがこんなことをするのかを考えていたが、まったく答えがだせず、とりあえず警戒することに越したことはないと思い、バーボンには口をつけないように沖矢さんに声をかけた。
「あ、あの。私をここに招いた本当の理由は?」
沖矢「それは貴方と一緒にお酒を飲みたいと思ったからですよ。」
「え?で、でもそれは。」
沖矢「ダメですか?」
ダメというか……なんというか。
赤井さんに振り回され訳が分からなくなる。
というか、てっきり尋問されると思っていたがそうではない様子にホッと胸を撫でおろす。
沖矢「もしかして、尋問でもされると思っていました?」
クスっと沖矢さんが笑うと、図星で少し恥ずかしくなった。
「そ、そりゃあね!仕事先であんな話をして相手の巣の中に招かれたら尋問されると思うのが普通です。」
フンっと沖矢さんから視線を外して不機嫌になる。
別に沖矢さんが悪いわけではないが、からかわれたのが嫌だった。
沖矢「尋問して貴方が素直に情報を話してくださるのなら尋問してもいいですよ?」
「遠慮しときます。」
そういえば、こうやって誰かとお酒を飲むのは初めてか。
いつかジンにぃと一緒に飲みたいな。
「あ、そうそう。」
沖矢「ん?」
「この楽しい楽しいお酒の時間が終わったら私と関わらないでくださいね。」
沖矢「それは無理なお願いですね。」
「そこをなんとか。」
沖矢「では逆に聞きますが、どうして関わって欲しくないのですか?」
どうしてって……。どうしてだろ。この人とは赤の他人なわけでこの人が死んでも死ななくても関係ない。
でも巻き込みたくない。
そんな矛盾した気持ちが頭をグルグルまわる。