第8章 日常1
しばらく無言のままで歩いていると知らない道に進む沖矢さんに声をかける。
「あのー……。どちらへ?」
沖矢「貴方が素直に家を案内してくれる可能性はゼロに近いので私の家に向かってます。」
Why?What?Pardon?
今なんと?
私の家なんて誰にも教えたくないから、そりゃぁ……適当にホテルに入って今日は友達と〜なんて嘘を考えていたが、そんな嘘さえも読まれて沖矢さんの家に?!
「は?!なんで?!」
沖矢「私と楽しくお酒でも飲みませんか?」
黒い笑顔の魔王が見えた気がした。そして本能が逃げろと訴えている。
沖矢さんが魔王の笑みを見せて0.5秒後、私は本能に従って反対方向にダッシュをした。
後ろを振り返らず全力で走った。
沖矢「どこにいかれるんですか?」
しかし、私が身を反転させたことに反応した沖矢さんは私のダッシュに少し遅れて走り出した。数秒後私の肩を掴んだ。
ここまでの時間、わずか5秒。
「魔王だ。魔王。魔王。」
私が沖矢さんにいろんな意味で恐怖を植え付けられた瞬間でもあった。
沖矢「誰が魔王なんですか?それから、人の目を見て話をしませんか?」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
目を合わせたら殺される!!
しかし、目を合わせなくても殺される!!
どうしたらいい?!
魔王から逃げるすべは無いのか?!
冷や汗がダラダラと体を流れていく。
沖矢「さぁ。行きますよ。」
ズルズルと引きずられながら沖矢さんの家に向かった。
心の中で助けを呼んだが、誰も来ないのは当たり前で。これから楽しい楽しいお酒の時間(生き地獄)の始まりであった。