第8章 日常1
ママ「渚さん。今日はもう上がっていいわよ。」
「え?」
ママ「今日はもう人こなさそうだし、渚さんちょっと疲れてる表情してるから。」
「そう?」
ママの発言により定時より1時間ほど早く上がらせてもらうことになった。
のはいいが。
沖矢「でしたら、家まで私が送りましょう。最近はいろいろ物騒なので。」
ママ「そうね。それがいいわ!」
「そ、そんな大丈夫ですよ!」
ママ「あら……。渚さんも女の子なんだから時には守ってもらいなさい」
語尾に音符がつきそうな程にママは嬉しそうに言った。
ママ……それは私にとって地獄だよ……。
なんてママに言えるわけないため、渋々赤井さんと帰ることになってしまった。
「じゃぁ……着替えてきますのでしばらく待っててください。」
重い足取りで更衣室に向かった。
着替えを済ませて帰宅の支度を済ませて先に外に出ていた赤井さんと合流する。
「おまたせしました。」
沖矢「いえ。では帰りましょうか。」
「はい……。」
沖矢さんの横に並んで歩く。
特に話すこともなかったので無言で歩き続けた。
時々赤井さん……いや、今は変装してるから沖矢さんの横がを見て思う。
綺麗な顔立ちしているな……と。
沖矢「あのー。先程から私の顔を見てますが……何かついてますか?」
「え?!あ、な、なななんでもないです!」
突然の声掛けに驚いて、明らか何かあったような発言をしてしまった。
沖矢「その反応だと何かあったんですよね?」
「い、いえ。だから何も……。」
沖矢「私を騙せると思っているんですか?」
「うぐ……。」
ぐぅの音もでない。さっき喫茶店で負けたことを思い出す。
だが、素直にカッコイイと言うのも癪。
「完璧な変装術だなと思って。」
素直に言えず出た嘘。
素直にカッコイイと言えば相手を調子に乗らせてしまうだけでなく、自分が不利な立場に陥ると思った。
そういうことにしてしまおう。
沖矢「変装?なんのことですか?」
とぼけた表情をしているが目は鋭く私の目を捕らえて離さない。
余計なことは喋るな とでも言いたげな目をしていた。目は口ほどに物を言う と言うが本当だな。