第8章 日常1
「いらっしゃいませー!」
午前から午後まではカフェの仕事。
表向きはスナックであるため、滅多に人は来ないが知る人ぞ知る穴場のカフェ。
クラッシックの曲が眠気を誘う。
ママ「あら。渚さん昨日は眠れなかったの?」
「あー。ちょっとね!」
昨日あんなことがあってか寝付けなくなってしまった。
アイツのこともそうだが……。
ママ「あら、いらっしゃい。初めてのお客様ね。」
?「えぇ。友人から穴場のカフェがあると聞いて。」
ピンクの癖毛でメガネをかけた好青年が来客した。
常連客ではないが、どこか知っているような気がした。もちろん今日が初めてなのは確かである。
男はカウンター席に座るとブラックコーヒーを注文した。
眠い目を擦りながらコーヒーを作る準備をする。
?「ホォー。豆から扱っているんですね。」
ママ「えぇ。この子の入れる珈琲は格別よ。」
「や、やめてよママ。あ!ライト?イタリアン?」
?「ではイタリアンで。」
ママに褒められ、照れながらもコーヒー豆を焙煎する。
ママ「んー!いい香り。」
?「えぇ。とても楽しみです。」
男はニコニコと笑顔を振り撒く。
私としてはハードルをあげて欲しくないのだけど。
?「そういえば、夜はスナックをやっていらっしゃるんですか?」
ママ「えぇ。私がこの店のママ。この子が渚。可愛いでしょ?看板娘よ!いろんな人から名刺を貰うほどね!」
「ちょっ!ママ!やめてよその話ー。」
ママはだってーと言いながら嬉しそうにニコニコしている。ママもスナックを始めて十数年……。名刺を貰う意味を知らないはずはない。ましてや、そのせいで夜の仕事は大変だなんて知らないんだろうな。
コポコポとコーヒーカップにイタリアンコーヒーを注ぎ、カウンターにコーヒーを置く。
「お待たせしました。」
?「渚さんですか。いい名前ですね。あぁ、申し遅れました。私は沖矢昴といいます。」
「あ、はい……。沖矢さんはよくコーヒーを飲まれるんですか?」
沖矢「えぇ。あ、すいません。ママさん。少し渚さんと二人っきりで話したいので席を外していただけますか?」
ママはキャーって顔を赤く染めるとごゆっくりーっと厨房の方へ行ってしまった。