第7章 気づかない2人
「……何がしたいの。どうせ調べたって言っても私の名前や生年月日程度でしょ。」
安室「えぇ。でもなぜわかるんですかねぇ?僕は一言も貴方の名前や生年月日しかわからないとは言っていません。それなのに貴方はそう言った。つまり、貴方がそれ以外の情報が漏れないように働きかけているということになりますね。」
!!やられた。
そうか、安室さんの目的は自分の情報を買うのではなく、私の事を聞き出すため。情報屋なのにこんな素人に情報を少しでも漏らすなんて……。
羞恥心と怒りが混ざり、冷静な判断ができなくなりそうだ。
相手の手のひらの上で踊らされていたなんて。
突きつけていた銃口を降ろす。
「これ以上私のことは詮索しないでください。命が欲しいならね。それから、貴方の情報は誰にも話さないことは約束しましょう。そのかわり、貴方も私のことを知ったとしても誰にも漏らさないことを約束してください。そうでなければ死んでもらうしかありませんから。」
私は立ち上がり客間の扉を開ける。
「今日はもう帰ってください。」
イライラする。
違う。焦っている。
何故?
こんな奴が死のうが生きようが私には関係ないこと。
じゃぁ、この気持ちは何?
知って欲しいような知って欲しくない。
あぁ、きっと私とジンにぃの幸せを壊されそうだからだ。きっとそう。
きっと……。
目の前が暗くなったと思うと、頭上から声が降る
安室「何を抱えているかは知らないが、貴方は黒に染まった訳では無いと思っている。」
数十秒抱きしめられていると理解できなかった。言葉の意味と今の状況を理解すると安室さんの胸板に手を当て距離を取ろうとするがビクともしない。
「離してくださいっ!貴方に私の何が分かるのですか!理解したフリなんて反吐が出る。」
安室さんの胸板を叩くが離してくれない。
「本当に貴方は何がしたいんですか。私は貴方の敵ですよ?!」
理解できない行動に混乱し、また、私の気持ちも複雑なものになった。
なんだと言うのだ。
私は貴方の敵。
なのに何故私を抱きしめ、私を信じているような発言をした?
私を動揺させるため?
ハニートラップ?
いや、彼の表情はそんな風には見えなかった。
それどころか、彼自身も暗く悲しみの深く青い瞳をしていた。