第5章 見上げた先のものより...
『え....好きな....ひと......』
わたしの体が小刻みに
震えているのがわかった。
私のことなんて
興味ないよなって
わかってても
やっぱり二宮くんに
好きな人がいるって
わかると、苦しくなる。
こんなにも私は
二宮和也というひとりの男が
好きなんだ。
二宮くんがさらに顔を近づけ
私と唇を重ねようとする。
少し顔を傾けて
近づいてくる彼は
すごく、すごく色っぽくて。
首筋が見えるたびに
わたしは苦しくなった。
二宮くんが
私の唇を奪う寸前に
薄目をひらく。
その目のきれいさに
私はやっと我にかえる。
『ちょっ....や、めてください....
好きな人、いるんですよね....?』
二宮くんが
上目遣いでこっちを見る。
「俺が、好きでもない女に
キスするような人に
見えますか?」
彼は笑って言った。
ねぇ、二宮さん。
私、期待しても、いいの?
うぬぼれかな?
とまどう私を
二宮さんは力強くだきしめた。
甘いでもさわやかで
優しいにおいが
わたしの鼻をくすぐる。