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徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第5章 日々は緩く過ぎ去りて


【泉side】

 取り敢えず近くのカフェに来たわたし達。店員さんに空いている席を案内され、それぞれ向かい合って座った。

「お飲み物は如何なさいますか?」
「紅茶と珈琲お願いします」

 注文をすると店員さんは直ぐに下がる。太宰さんは其れを確認してから話し出した。

「先ず私は君に謝らなくてはならない。御免」
「……其れは何に対する謝罪です?」
「盗み聞きした事」

 わたしはふぅっと溜息を吐いた。

「何で盗み聞きなんてしたんですか」
「応接室の扉が少し開いてて……。中から君達の声が聞こえたから、つい……」
「女子で集まってるって知ってましたよね? 中に入らないでねって云われてましたよね?」
「判ってた、云われてた。けど好奇心に勝てなかったんだ」
「……まぁ、わたしも話聞かれた位で怒るのはやり過ぎだとは思いますけど」

 何時の間にか来ていた紅茶に口を付ける。実際、あんなつっけんどんな態度を取ったのも羞恥心からだったのだし、もう怒る必要もあるまい。

「……わたしも冷たくしちゃって御免なさい」

 流石に相手に秘密で好きな所を話していた所を聞かれてしまったら恥ずかしくて死ねる。太宰さんは「うん」と小さく頷いた。

「出来れば君から直接聞きたかったのだけどね」
「其れは恥ずかし過ぎるので止めて下さい」
「冗談だよ。……じゃあ私も君の好きな所を連ねてみようか?」
「な、」
「私ばかり知っているのもフェアじゃ無いだろう?」

 う、とわたしが反論に詰まると、太宰さんはその隙を突いて話し出した。

「先ずは君の其の優しさかな。人の為に何かをしようとする其の心が美しい」
「待って、」
「後は世話焼きな所も可愛らしいね。鏡花ちゃんや敦くんの面倒を見ている時の優しい顔が好きなんだ」
「ま、止め、」
「嗚呼、あとは知識豊富な所も良いね。知性と品が有る女性は好みだよ」
「……っ、もう止めて下さい……」
「後は……」
「もーいいですっ! わたし帰る!」

 耐え切れずにガタンと席を立つ。二人分の代金を机に置いてわたしは逃げるように店を出た。

「おーい泉さん、逃げないでよ〜」
「太宰さんの莫迦! もぉ知らない!」

 わたしは後ろから追いかけて来る太宰さんにそう云い捨てて逃げた。後ろで太宰さんが愛しい物を見る様にくくっと笑みを深くしていた。

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