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徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第5章 日々は緩く過ぎ去りて


【太宰side】

「只今戻りました〜……」
「お、戻ったか敦」

 国木田くんが玄関から聞こえる声に反応する。敦くんが一人で買い出しに行っていたので、せめて荷物を持ってやろうと私も席を立った。
 泉さんとは盗み聞きの一件から何かとぎくしゃくしている。仲直りしたいとは思うのだが、中々タイミングが掴めない。いっそ敦くんと一緒に彼女が居たらなぁ、なんて考えていた時だった。

「何だ、お前も居たのか泉。……って芥川!?」
「あ、大丈夫ですよ。荷物持ち手伝って貰っただけなので」
「僕も吃驚しました……。真逆芥川に云う事聞かせるなんて」
「一寸、わたしを猛獣使いみたいに云わないでくれる?」

 国木田くんの驚きの声と敦くんの呆れ声、そして聞きなれた女性の声。

「泉さん!?」
「うわ吃驚した」

 ぎょっと体を反らす泉さんにも構わず、私は彼女の肩を掴んだ。

「一寸話があるのだけど」
「……其れは判ったので、取り敢えず荷物置いて善いですか?」

 国木田くんに自分の持っていた袋を預け、芥川くんからまた袋を預かる。

「国木田さん、此れ何処に置きます?」
「嗚呼……否、俺が持って行く。お前は話をして来い」

 早い所話をせんと太宰がうざいからな。国木田くんはそう云っているけれど、何だかんだ心配をしているのは判る。泉さんも其れを察したのか、「判りました」と笑みを浮かべて頷いた。

「あ、龍一人で帰れる?」
「問題無い、僕に構うな」
「はいはい。ちゃんとご飯食べてよね」

 じろ、と芥川くんを睨みつける泉さん。何時の間にそんなに仲良くなったんだ。と云うか何で芥川くんが此処に居るんだ。

「太宰さん、行きましょう」
「あ、嗚呼、うん」
「何でそんな吃ってるんですか……」

 私の手を取りながら彼女は苦笑いを零す。自分に向けられた笑みを見たのは久し振りだとさえ感じた。

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