第5章 日々は緩く過ぎ去りて
「珍しいわね、こんな昼間に会うなんて」
「……日のある内に仕事をする事くらい有るだろう」
「其れもそうね。御免なさい」
不本意そうにそう云う龍の体からはほんの少し硝煙と鉄の匂いがした。わたしは其れに気づかない振りをしつつ尋ねた。
「ねぇ、龍?」
「何だ」
「貴方、仕事は終わった?」
「……何が云いたい貴様」
「買い物手伝って欲しいんだけど♡」
にっこり笑ってそう頼むと、龍のみならず敦くんもえっと云う顔をした。
「な、何で芥川に!?」
「わたし達二人だけだとこの買い出しの量を持つのは無理だもの。折角会ったんだし、手伝って貰った方が効率的でしょ?」
「否、確かにそうかもしれませんけど……」
「僕は手伝わんぞ。人虎と仲良く買い出しなど虫唾が走る」
「そんなの僕だって!」
「はいはい喧嘩しないの」
ガルル、と喧嘩を始めた二人をポンポンと軽く叩いて諌める。わたしは不機嫌丸出しの龍に自分の持っていた袋を押し付けた。
「貴様何を、」
「善いから。これ持って二人はここで待機してて? わたし残り買って来るから」
敦くんからメモを引ったくり、わたしは一人商店街へ駆け出した。
***
「芥川が云う事聞くなんて意外だったよ」
「あの女には一応恩があるからな。貴様こそ随分仲良くしていたじゃないか。太宰さんはもう善いのか?」
「何で其処で太宰さんが出て来るんだよ? あの人と太宰さんは別物だろ」
「何故太宰さんは僕では無く貴様の様な人虎やあの女を選んだんだ……。理解出来ぬ」
「判らないんじゃお前の理解は其処迄って事じゃないのか?」
「何だと?」
またぎゃんぎゃんと喧嘩を始めそうな彼らを見て大きく溜息を吐いたのはまた別の話。
「街が壊れるから君達は喧嘩しないでくれる?」
「は、はい」「……」
「龍、返事は?」
「……判った」
「宜しい」