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徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第5章 日々は緩く過ぎ去りて


「え、太宰さんと喧嘩してるんですか?」
「喧嘩って云うか、一方的にわたしがむくれてると云うか……」

 あはは、と買い物袋を片手に苦笑いすると、隣を歩く敦くんは「笑い事じゃないですよ」と軽く眉根を寄せた。
 何故二人でいるのか? それは図書館での仕事帰り、買い物袋二つとメモを持って街をうろうろしている敦くんを見つけた。声を掛けると「買い出しに来たんだけど買う物が多すぎて」との事。其れで、この後の予定も特に無いわたしは敦くんを手伝っていたのだった。

「そもそも如何してそんな事になったんですか?」
「ほら、探偵社で女子会してたでしょ? 其の時にわたしの聞かれたくない話を太宰さんが盗み聞きしてたのよ」

 話の内容は敢えて伏せる。恥ずかし過ぎて他人に話すのは一寸嫌だ。敦くんはふむ、と考え込んだ。

「全面的に太宰さんが悪いですね」
「まぁそうなんだけど。わたしも聞かれた位で意地張ってるのもなって思って」
「でも泉さんから謝る事じゃ無いですよ」
「うーん……。あの人女子会の後にわたしの家来たけど、色々ごたついてて話出来なかったのよね……」

 ごたついててって? 敦くんが不思議そうに尋ねた。実はね、と話し出そうとした時、丁度黒い外套が目に入った。

「あら、龍じゃない」
「……貴様に龍呼ばわりされる覚えは無い」
「はいはい。……顔色は大分良いわね、善かった」
「貴様が世話を焼くからだろう」

 芥川龍之介──わたしは最近『龍』と呼ぶようになった彼が居た。真昼間だと云うのにマフィアが彷徨くなんて、珍しいの一言しか無い。

「え、泉さん何で芥川と……?」
「え? あ、そうか、敦くんにとっては敵なのか」

 忘れてた、と呟くと「否何で此奴と仲良く……?」と困惑している様子。わたしは彼との関係を掻い摘んで説明した。
 ──因みにあの看病の後、わたしと彼は何度か街で出くわすようになった。その度に顔色が悪かった龍を食事に連れて行ったり睡眠を取らせたりと何かに付け世話をしていた。其の結果か、あだ名を付けて呼ぶ程度には親しくなったのだった。と云ってもわたしが一方的に呼んでいるだけなのだけど。

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