第1章 出逢い
家に着くなりまずは服を脱がせ、大量の手拭いで体に付いた水滴を拭き取った。着替えは何故か有った男物の浴衣を着せ(本当に何で有ったんだろう)、わたしの布団に横にさせる。
「御免なさいね敦くん。無理に手伝わせちゃって」
「いえ、僕は仕事休みでしたし。太宰さんは溜まってますけど」
「……そう云えば、二人とも同僚なの? 知り合いなのは確かみたいだけど」
太宰さんの頭にお湯で温めた手拭いを置きながら尋ねる。敦くんはわたしの出したお茶を両手で持ちながら「ええ、まぁ」と歯切れ悪く頷いた。
「武装探偵社って知ってます?」
「武装探偵社……?」
わたしが首を傾げると、敦くんは予想していたようにスラスラと教えてくれた。
「異能力って云う力を持つ人達が集まる会社……みたいな所です。警察じゃ解決出来ないような事件を担当したり」
「異能力を使った事件、とか?」
「ええ、そんな感じです」
要するに危ない仕事を率先して行う所と云う訳か。わたしは少し目線を下げて問うた。
「……ポートマフィア、とか関係あったりする?」
敦くんはきょとんと目を丸くさせ、驚いたようにわたしを見た。
「御免、何でも無いから気にしないで」
へらりと笑うと、敦くんはまだ何か気になるようにわたしに視線を向けていた。だが無駄だと悟ったのか、お茶を飲み干して腰を上げた。
「……じゃあ、僕はこれで。社の人達に報告しないといけませんし」
「そっか、大変ね。頑張って」
「有難う御座います。太宰さんの目が覚めたら一応此方に連絡を」
そう言って差し出されたのは電話番号の書いてある紙。わたしは其れを受け取り、「じゃ、社員さんお預かりしますね」と悪戯っぽく笑ってみせた。