第4章 探偵社女子、マフィア男子
わたしの悲鳴で中也さんが飛んで来る。へたり込んでしまったわたしに代わって扉を開けたのは、訪ねて来た太宰さんだった。
「……何で中也が此処に居るの?」
「手前こそ何で此処に居るンだよ? 此奴のストーカーか?」
「其れは君の方じゃないのかな?」
「あァ? 手前もう一遍云ってみやがれ」
「泉さんのストーカー」
「其れは手前だっつってんだろうが」
「……あの、お取り込み中悪いんですけど。取り敢えず中入ってくれます?」
もう夜だし、ご近所にも迷惑かかるので。そう云ってわたしは中也さんの服をぐいっと引っ張り、太宰さんを中に招き入れた。
***
夜なので珈琲や紅茶は止めて、薬剤師仲間から頂いたカモミールティーとやらを出してみた。リラックス効果があると聞いたため、効くかなぁと訝しがりつつ出してみる。
二人が一口ずつ飲んだのを確認してから、わたしは口火を切った。
「多分お二人共誤解してると思うんです」
「中也は泉さんのストーカーだろう? 何も間違っちゃいないよ」
「手前ぶっ殺すぞ」
「はいはい其処からおかしいんだってば」
わたしは隣の部屋に寝ているであろう芥川くんに気を遣いながら声を少し潜めた。
「中也さんはさっき会ったばかりです。一寸話が有るらしかったけど、芥川くんが具合悪そうだから家に避難させたんです」
「話って?」
「其れは後で話します」
話がややこしくなるのを防ぐ為、太宰さんへの説明は一旦其処で切った。今度は中也さんの方を向く。
「……で、中也さん。太宰さんはわたしの恋人なのでストーカーじゃ有りません。安心して下さい」
「其れは其れで安心出来ねェけどな」
「多分大丈夫ですよ、多分」
「ちゃんと云い切ってくれ給えよ泉さん……」