第4章 探偵社女子、マフィア男子
【太宰side】
偶然応接室の前を通ると、女子三人と彼女が何やら集まって話をしていた。そう云えば鏡花さんが女子会とか云っていたな。
どんな話をしているのだろうか。私は好奇心からそっと聞き耳を立てた。
「そういえば、太宰と泉ちゃんは何方からなんだい?」
「何方って?」
「告白だよ、告白」
与謝野さんがニヤッと人の悪い笑みを浮かべたのが目に見える。彼女は困ったような声音で云った。
「太宰さんから……です」
「じゃあ、お姉さんは告白されてOKしたって事?」
「うん、まぁ」
「太宰さんの何処が好きになったんですか?」
質問攻めだ。ナオミさんの問いに、彼女は改めて考え直したようだ。何処が好き、か。当然全部だろう、なんて自信に満ちていた私の予想を彼女は悪い意味で裏切った。
「……顔?」
「其れだけかい?」
意外そうな声で与謝野さんが云う。「他には……?」鏡花ちゃんが尋ねた。彼女は又うーんと唸った。
「……あったかい所……?」
どう云う事だい其れ。丁度心の中でそう思った時、ナオミさんが「どう云う事ですの?」と彼女に尋ねていた。グッジョブ。
「偶に太宰さんわたしの部屋に泊まるんだけどね? 寝る時、必ずわたしを抱き枕にするの」
体温高くてい良いんだって。そう言って彼女が笑うと「そんなに高いかねェ?」と与謝野さんが訝しげな声を上げた。
「密着してるから、相手の体温って善く分かるでしょ? ……恥ずかしいんだけどね……」
彼女は先程までより声を一つ低くした。思わず私も扉に耳を付けて聞き漏らさないようにする。
「……あの人と一緒に寝るとね、凄く安眠出来るの」
今まで眠りが凄く浅くて、夜中に何度も起きてたのに、もう無いのよ。彼女は少し嬉しそうに声を弾ませた。
「安心出来るんだなって思ったんです」
あったかくて、安心出来る人だから好きなのかも。彼女は扉越しでも判る様な、ふにゃりとした心底幸せそうな声を出した。
「太宰さんには絶対秘密ですよ?」
「勿論ですわ! 乙女の秘密です!」
「内緒……」
「当たり前さねェ。女子会の話は持ち出し禁止さ」
其処まで聞いて、ポンと肩を叩かれた。振り向くと国木田くんが居た。
「太宰、貴様」
「待って国木田くん誤解だと思う」
「仕事もせず盗み聞きか」
「わー違うって! つい! 魔が差した!」