第3章 夜道にはお気をつけて
「ま! 今は芥川くんは敦くんに夢中らしいけどね!」
けろりとした声で太宰さんは笑った。
何でも、太宰さんが敦くんについて褒めていた事を聞いていたらしく、敦くんに嫉妬しているのだとか。
「本当に太宰さん好きなんですね、あの少年」
「執着しているだけだよ。私は彼に冷たく当たって来たからね」
此の前なんか街中で敦くんと異能対決始めちゃってさー焦ったよ本当に。そんな風に云ってはいるが、実際困ったとは思っていないのだろう。
「でも異能対決なんて……あの二人が暴れたら大変なんじゃ?」
「うん、多分暴れ出したら街一つは壊れるね」
ま、敦くんも売られた喧嘩を買った訳だし。と太宰さんは軽く云った。
「あの二人は犬猿の仲だから放っておいても善いんだけどね」
「真逆止めなかったんですか!?」
「一回は止めたよ。でも無理だったんだもの」
はぁ、と思わず溜息を吐く。
「で? 君はどうなの」
「へ?」
「君は何か話したい事は無いのかい?」
「わ、わたしですか?」
「別に話せないなら善いのだけど。……国木田くんと楽しそうにしていたからね」
少しだけ顔を上げようとすると、直ぐに太宰さんの胸に顔を押し付けられる。
「見ちゃ駄目だよ」
「変な顔でもしてるんですか?」
「そんな所」
どうやら嫉妬しているらしい。何て事だ、……可愛いじゃないか。
「国木田さんと話してた事、そんなに気になります?」
「別に? 君達の個人的な話だろうし気にはしてないさ」
「別に大した話はして無いですよ。太宰さんを頼むって云われた位で」
そう云うと、太宰さんは予想外だったのか「は? ……は?」と戸惑うような声を上げていた。
「太宰が迷惑掛けるかもしれないけど宜しくって。愛されてますね、太宰さん」
「……今物凄く入水自殺したい気分」
「駄目ですよ」