第2章 昼下がりの邂逅
わたしがぼうっとして居た所為だろうか、鏡花ちゃんがわたしの顔を覗き込んで来た。
「わ、鏡花ちゃん?」
「如何したの……? ぼうっとしてたけど」
「え、そ、そう? 御免ね」
「何かあった?」
鏡花ちゃんの瞳がわたしを射抜く。純粋な真っ黒い瞳はじっと私を見つめた。
「ん、何でもな」「ぎゃああああ!!!」「……え!?」
太宰さんの珍しすぎる悲鳴が聞こえ、わたしはぎょっと其方を振り向いた。
「おやァ? 太宰、逃げるンじゃあないよ?」
「与謝野先生怖い!」
珍しく恐怖して逃げ惑って居る太宰さんを見て、わたしは吃驚しながら鏡花ちゃんに尋ねた。
「……あれは?」
「与謝野さんの異能、瀕死の人しか治せない……。だから、一回半殺しにするの」
「……ああ……。だから鉈を持ってるのね……」
与謝野さんの手には鉈が握られ、太宰さんは彼女から必死に逃げている。
と、与謝野さんがくるりとわたしの方を振り向いた。
「おや、泉さんじゃあないか。怪我してないかい?」
手にはギラリと光る鉈。わたしは思わず体の前で両手をぶんぶんと振った。
「いえ、わたしは健康体なので!」
「何だい、つまんないねェ」
笑って誤魔化すと、鏡花ちゃんがくいくいとわたしの服の袖を引っ張った。
「お姉さん……。今度、女子だけで集まらない……?」
「!」
「いいねェ、女同士でじっくり話せるじゃあないか」
「賛成ですわ!」
「駄目……?」
「ううん、勿論! 楽しみにしてるね!」
新しい友人と、新しい予定。わたしは少しだけ世界が広がったような気がした。