第2章 昼下がりの邂逅
「敦くん好きな人居るの?」
「へ!? い、い、居ませんから!」
「顔真っ赤だよ〜?」
「本当ですわね」
ナオミさんもひょいと敦くんの顔を覗き込む。潤一郎さんは総て判って居るのか、苦笑いを零していた。
その間も敦くんはちらりちらりと鏡花ちゃんを見ている。……隠す気はあるのだろうか。
「……どうして……私の事見てるの?」
鏡花ちゃんも流石に気付いたのか、敦くんの方に怪訝な表情を向けた。敦くんは「あ、や、違くて……その……」としどろもどろに成っている。
思わずくすくす笑ってしまうと、「笑わないで下さい……」と赤い顔を隠した敦くんがボソリと云った。
「あは、御免ね。可愛かったからつい」
「逃げたくなるから……もう止めて下さい……」
「御免って」
ふっと周りを見渡す。
今はこんなに和気藹々としている所だけれど、事件が起きれば危険な事も躊躇無く行うのだろう。怪我をされれば心配になるし、出来れば怪我をして欲しくないとも思う。この仕事をしている限りは無理な話なのだろうけど。
(それに……)
わたしはナオミさんと潤一郎さんを見つめた。危ない仕事はして欲しくないというナオミさんと、仕事をしなきゃ食べて行けないと言う潤一郎さん。お互いがお互いを思って生きているその姿は、とても綺麗な物に見えた。
兄弟とか、家族とか、わたしはそんな夢を持つことは無かったけれど。
(いいなぁ……)
仲が良い社員達の様子を見て、わたしは一人紅茶を啜った。