第2章 昼下がりの邂逅
「何の話をしてたんですか?」
「敦さん、丁度善いですわ! お二人共お座りになって!」
「何の話……?」
「泉さんと太宰さんの出会いですわ! 泉さんたら恥ずかしがって話して下さらないんですの」
ナオミさんが頬を軽く膨らませてわたしを見る。だって、話すって云ったって。
「あ、僕知ってますよ」
「敦くん云わなくて善いの!」
太宰さんとの出会いの場に唯一居た敦くんが声を上げる。
「でもそんなに恥ずかしがる事ですか? あれ」
「話すのが大変じゃん……」
「ゆっくりで良いのです! ナオミは聞きたいですわ!」
「う……」
ナオミさんの圧に負けて、わたしは運んで貰った紅茶を一口啜った。
「えっと……。出会い? は……自殺……なんですよね」
それから、わたしは太宰さんと出会った経緯を掻い摘んで話した。きらきらとしたナオミさんの視線が一寸痛い。
「……とまぁ、そんな事がありまして。結局わたしが負けて付き合うことになったんですけどね……。って事でわたしの話は此処でお終い! 皆さんは好きな人とか居るんですか?」
無理矢理に終わらせ、次の話題に移る。
「ナオミは兄様ですわ!」
「善いですね、ご兄妹仲良しで」
ナオミさんの潤一郎さんに対する自慢話を聞いていると、潤一郎さんは一寸照れた様に肩を縮こまらせていた。
其の様子にくすくす笑っていると、敦くんの顔が少し赤くなっていた。
「敦くん? 如何かした?」
「えっ! い、いえ何も……」
其れにしても顔が赤い。熱でもあるのかと思って見ていたのだが、どうやら違ったらしい。
敦くんは『好きな人』の話題が出た瞬間、鏡花ちゃんの方をチラチラと見ては顔を赤くしている。……成程ね。