第2章 昼下がりの邂逅
「私達もご一緒して宜しいですか? ね、お兄様」
「あ、嗚呼、そうだな。善いかい?」
「ええ、大丈夫ですよ。谷崎さん、ナオミさん」
そう云うと、わたしの向かいに腰を下ろした谷崎さんは困った様に笑った。
「潤一郎で善いですよ。谷崎だとナオミもそうですしね」
「あ、じゃあ潤一郎さん……?」
そう呼ぶと、谷崎さん……否、潤一郎さんは嬉しそうに笑った。
「其れにしても吃驚しましたわ。あの人に恋人が居たなんて」
「え、そうなんですか?」
ナオミさんの言葉に思わず目を丸くする。わたしから見た太宰さんは、女慣れしていて恋人なんて沢山居そうな男の人だったから、少し意外だった。
「太宰さん、仕事してる時に徐ろに『私、彼女出来たから』って国木田さんに云い出してたンだよ」
「皆さん吃驚仰天して、直に聞いた国木田さんは真っ白になってらしたの」
「そうそう、敦くんは固まってたし」
「与謝野さんと賢治くんはニヤニヤしてましたわね」
わぁ、凄い個性の出る反応だ。因みに乱歩さんは駄菓子を食べ歩きながら「おめでとー」とかなり適当に返していたらしい。
「そう云えば、太宰さんとの馴れ初めって?」
「な、馴れ初め……!?」
「そうですわ! 太宰さんは教えて下さらなかったのです」
「ナオミさん迄……」
馴れ初めなんて、あれはそんな大層な物では無い。どう話そう、と唸っていると「お茶とお菓子持ってきました……何の話です?」敦くんナイスタイミング。