第2章 昼下がりの邂逅
敦くんとにこにこ会話をしていると、眼鏡で長身の男性がぬっと出て来た。
「俺は国木田独歩。……小娘、あの唐変木に何かされてないか」
「は、初めまして国木田さん……。えっと、されてると云えばされてますけど……」
「何をされた」
「メイド服着せられたり襲われそうになったり……?」
「……其れは災難だったな」
「あはは……」
国木田さんの目が哀れな者を見るような目になっていて、わたしは苦笑いを零すしかなかった。
すると会話の切れ目を読んだかの如くまた人が現れた。
「僕は江戸川乱歩! 名探偵!」
「乱歩さん……ですね、初めまして。如月泉です」
「……! 君、面白い眼をしてるね。探偵向きの眼だ」
「眼?」
「そう。人の見極めが得意そうな眼。そんな経験、無かった?」
「……さぁ……。仕事柄、相手の顔色を見るのは得意だと思いますけど」
ラムネ開けて、と乱歩さんに差し出された瓶の蓋を開け、彼に返す。ありがと、と云いながら彼はさらに会話を続けた。
「ま、あの小虎ですら事件解決に役立つ推理をしたンだから、君にも出来るさ!」
まぁ、おつむが柔らかくないと出来ないけども! 何て、何ともサラリと云うものだ。
「小虎って、敦くんの事ですか?」
「そう、小虎。いいよねーあれ」
乱歩さんと何故か敦くんの話題で盛り上がっていると、後ろから不意に抱きしめられた。
「酷いじゃないか! 何で私を無視するのさ!」
「太宰さん……。御免なさい、忘れてました」
「酷い!」
「すいませんって。機嫌直して下さいよ」
「チューしてくれたら許す」
「嫌でーす」
と、ベリっと云う効果音が聞こえるくらい鮮やかに太宰さんが剥がれた。
剥がしたのは国木田さんだ。
「何をしている太宰」
「ちょ、国木田くん! 私と彼女を引き離さないでよ〜」
「……与謝野さん、太宰を頼みます」
「ア゙ッ待って! 与謝野先生は止めて!」
太宰さんの断末魔を聴きながら、わたしは敦くんと鏡花ちゃんに声を掛けた。
「ね、折角だしもう少しお話しない? わたしの恋人は連れて行かれちゃったし」
「善いですね! お茶とお菓子持ってきます!」
「お姉さんは座ってて……」
「え、準備するなら手伝うよ?」
そう申し出るが、二人の圧力によって封じ込められた。うう、強い。