第17章 愛の伝え方
電話を切り、わたし達はフードコートのとある席に座った。
「敦くんもう直ぐ来るって。渡す?」
「……うん。折角選んだし」
鏡花ちゃんはこくりと大きく頷いた。椅子に座らされている白虎は転んだ所為で少し汚れてしまっていた。けれどそれは、相手を想って買ったプレゼントだから。
「泉さん!」
「あ、敦くん! 此方だよ」
「よ、善かった鏡花ちゃん見つかって……」
「御免ね、走らせちゃって……」
敦くんの呼吸が整うのを待って、鏡花ちゃんが白虎のぬいぐるみを敦くんに差し出した。
「これ、あげる。その……」
鏡花ちゃんはそこから少し照れて言葉に詰まった。敦くんは首を傾げながら次の言葉を待っている。
「い、何時も……有難う……」
「! あ、有難う……。大切にするよ!」
鏡花ちゃんも敦くんも慣れないからかぎこちなく、でもとても嬉しそうだった。わたしは思わずくすくす笑い、二人の頭をわしゃっと撫でた。
「良かったね、二人共」
「うん……」
「何かと思いました……」
これが鏡花ちゃんなりの大好きの伝え方。そして敦くんなりの感謝の伝え方。何て可愛らしいのだろう。
三人で微笑ましい時間を共有していると、ふと鏡花ちゃんが問うた。
「お姉さんは何か買わないの?」
「えわたし?」
「そうですね……。自分の買い物してる所、見た事無いですし」
「うーん……。買おうと思ったんだけど、何をあげたら喜ぶか迷っちゃってね」
へへ、と笑うと二人はわたしを席から追いやった。
「お姉さん、選んで来て」
「太宰さんは泉さんから貰えたら何でも嬉しいと思いますよ」
「ほんとに……そうかな」
「悩んでるなら行った方が良いですよ。昔書巻で読んだんです」
『昔、私は、自分のした事に就いて後悔した事は無かった。しなかった事に就いてのみ、何時も後悔を感じていた』
其の言葉を聞いたわたしはふっと笑みを漏らした。そうだね、その通りだ。
「有難う敦くん。じゃあ後悔しないように行ってくる」
「はい!」
「お姉さん、わたし達此処で待ってるから……ゆっくり見て来て」
「有難う二人共。行ってきます」