第15章 生命を司る樹
「マザーは総ての生命の母だ。やがて子ども達を操り、世界を混乱に陥れるかもしれない……」
「……そうね、若しかしたらそんな事になるかも」
フィッツジェラルドの言葉に、わたしは素直に頷いた。敦くんがぎょっと目を見張る。そんな事は無いと云いのだろうけど、この先そうならない自信なんてわたしには無い。
「でもね」わたしは真っ直ぐにフィッツジェラルドを見返した。
「若しわたしがそうなったとしても、太宰さんも探偵社の皆も、きっとわたしを止めてくれる。そして、わたしはそうならないように努力するわ」
わたしが間違えたら、きっと彼らは全力で止めてくれる。証拠なんて無いけど、其れは絶対に信じられた。
フィッツジェラルドはわたしの言葉を聞き、少し目を丸くさせた。だが其れも直ぐに不敵な笑みに変わる。
「其処まで云うか……。だがな、お前達がどんなに互いを思っても横浜は消える。仲間も死ぬ」
「そんな事させない!」
街には沢山の人がいる、探偵社の仲間達も、中也さんも紅葉さんも、首領も、エリスちゃんも。
そして何より、太宰さんがいる。
だから落とす訳には行かないんだ。
「スイッチを渡して」
キッと睨み付けると、フィッツジェラルドはニヤリと笑みを浮かべた。
「そんなに欲しいなら俺を倒して奪えばいい。但し……戦うのはタイガーボーイとMr.芥川だけだ」
「何故?」
「君が更に怪我を増やしたら、君が治せる量が減るだろう? 俺にとって其れはマイナスなのさ」
だからそこで見ていろ。ギロリと睨まれ、わたしは少しだけビクリと肩を震わせた。フィッツジェラルドはその一瞬でわたしの手首と足を縄で縛りあげる。敦くんが直ぐに攻撃を仕掛けるが止められ、龍が襲っても無駄だった。
「そこで自分の無力を嘆いていろ、マザー」
「この……畜生男……」