第14章 社内会議
「黒服ならパンツスーツの方が動き易いだろうねェ」
「怪しく見えるようにサングラスでも掛けます?」
「サングラスならこれだね。服はナイフや拳銃、爆弾が仕込めるように少しゆとりを取ろう」
「髪の毛、暴れた時に邪魔ですし纏めましょうか」
「否、今のアンタの髪型でいいよ。後れ毛が出ると逆に大変だろう」
「あそっか」
医務室に移動し、わたしは与謝野さんと服装を練った。女子同士で服の話になると、矢張りぽんぽんと会話が弾み、服はあっさりと決まった。
「此れで如何だい、善い感じだろう?」
開襟ブラウスに黒のジャケットとパンツ、動き易いように靴はヒールの低い革靴に。サングラスはヘリ操縦の時の太陽光避けにもなる。ジャケットの下には拳銃と予備の弾倉が二つずつ、袖にはナイフ、腰には爆弾、足首には拳銃が使えなくなった時の為の予備拳銃を一丁。
何処ぞの軍隊でもここまで仕込まないだろうと言うレベルの重装備だった。
「重くないの、それ?」
太宰さんがけほけほと咳をしながら問う。多少は重いけれど大丈夫です、と答えると太宰さんは「そう」と興味なさげに明後日を向いた。
「太宰も心配してンのさ。どんなに装備を万全にしても泉が危ない事には変わりないからねェ」
「与謝野先生其れ云うの止めて貰えますか」
会議室に笑いが起きる。
「国木田さん、機体の準備出来ました」
潤一郎くんが顔を出す。国木田さんはそれを聞いてこくりと頷いた。
「よし、泉も準備は大丈夫だな。忘れ物は」
「特に有りませんよ。子供の遠足じゃないんですから」
「其れもそうか」
機体の準備も、わたしの支度も整った。後は、組合の機体の居場所を探るだけ。
でも、それだけ馬鹿でかい機体でマフィアと探偵社を一気に潰すつもりなら、何処かの空中ポイントで漂っている筈。わたしは太宰さんを振り向いた。
「白鯨の全長は?」
「具体的には判らないが、予測は出来る」
太宰さんの予想全長を聞き、わたしは頭の中で計算式を立てた。
横浜に落として潰すなら高さは最低でもこの位の重量と距離が必要。スピードだって関係してくる。だとすれば大体の位置は……。