第14章 社内会議
「じゃ、異能を見せなければ善いんですよね?」
わたしがそう尋ねると、乱歩さんは首を横に振った。
「いーや、絶対使うし見せちゃうと思うよ、君ならね」
「何で……」
「行った先に傷だらけの小虎が居たらどうする? 治しちゃうでしょ?」
「だねェ。しかも彼処の長は男で怪力、アンタじゃ絶対に敵わないよ」
与謝野さんまで。でも乗り込まなきゃ助け出せないし、如何すればいいんだ。会議は八方塞がりになった。
「ま、彼処の長に見つからずに小虎の傷を治せれば勝機はある」
「……要するにバレるな、と?」
「そう。傷を治してしまえば君は強い味方を得た事になる。後の戦闘は彼に任せてしまえば善い」
うん、我ながら佳い策だ。乱歩さんは駄菓子を貪りながら満足気に頷いた。
「でも機体まで如何やって行くんです?」
潤一郎くんが目下の課題を指摘する。其処でまた全員が考え込んだ。「僕が泉さんを放り投げましょうか?」なんて賢治くんが云うが、流石に其れはわたしが死ぬ。
「本拠地に出来る程大型なら、必ず補給をする時がある筈です。其処を狙って忍び込めれば……」
「補給機に化けるのかい?」
「其れ以外にバレずに潜り込める方法、あります?」
わたしの言葉に与謝野さんが押し黙った。だがそうなると、問題は機体だ。一人か二人乗りの小型ヘリで、尚且つ補給機に似せられる機体。そんなヘリを用意できる所はわたしも他の社員も知らなかった。
其の時、小さな咳の音がした。
「其れなら、警察の機体を使えば良い」
「だ、太宰さん!?」
太宰さんが何時の間にか医務室から抜け出していた。周りの目線も物ともせず、太宰さんはわたしの隣の席に着いた。
「何してるんですか、寝て下さい!」
「だって楽しそうな話してるから……」
「だっても何も無い! 病人は寝てろ!」
「ぐえ」
国木田さんが太宰さんの首を軽く絞める。何時もより弱い力なのは彼なりに気を遣って加減しているのだろう。
わたしはハッと気づいた。
「警察の機体って、どう云う事です?」
わたしの言葉を聞いた太宰さんは国木田さんの拘束から抜け出し、ニヤリと笑った。
「私の手に入れた情報によると……」