第2章 昼下がりの邂逅
だって! あんな捨てられた子犬みたいな目で見られたら頷くしかないじゃない! 何て言い訳をしても誰かが聞いている訳では無い。わたしは渋々太宰さんの差し出したメイド服に着替えた。
「……太宰さん、着ましたけど」
「お、どれど──……」
「凄く丈短くないですか? 下着見えそうですよ」
「……」
「太宰さん……?」
嫌な予感がする。頗る嫌な予感がする。太宰さんに視線を向けると、彼は無言で携帯のシャッターを切っていた。
カシャシャシャシャシャ。
カシャシャシャシャシャ。
カシャシャシャシャシャ。
「否、撮り過ぎ!」
「大丈夫だよ、此れは私しか見ないからね」
「そう云う問題じゃ無いですよ!」
「判った、写真は止めるからさ、可愛く珈琲持ってきてよ♡」
「……はァ?」
「泉さん、顔が物凄く怖い。般若みたい」
「誰の所為だと思ってるんですか」
「ほらほら、やってくれないと永遠に撮るよ〜?」
「……はぁ。判りました、でも一寸お時間頂きますよ」
また大きな溜息を一つ吐いて裏に戻る。珈琲豆を挽き、カップに注ぎ、太宰さんの元へ運ぶ。
「『お待たせ致しましたぁ、珈琲で御座います♡』」
ぴこん。
「……待った」
「ん? 何だい泉さん」
「動画撮りました?」
「さぁねぇ、私は知らないよ?」
「撮りましたよね?」
「……さて、珈琲を飲まなくてはね。冷めても美味しいけれど、どうせなら熱々の方が美味しいのだから」
「太、宰、さ、ん?」