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徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第13章 探偵社


「自分を憐れむな」

 その言葉はストンとわたしの心に落ちた。そうだ、わたしはずっと哀しんでいた。孤児院での仕打ち、人を殺してしまったこと、逃げ出したこと。其れ等がずっとぐるぐる回って離れなくて、其れで苦しくて、まるで悪夢の様で。

「君が苦しんでいたのは知っているさ。でももう過去は関係ない」

 わたしは自分の異能で一度人形になった。人形になり、太宰さんのお陰で元に戻った。人を人形にする事は其の人を一度殺すという事で。
 嗚呼、と納得した。今までのわたしはもう死んだのだ。過去のわたしと今のわたしは違う。そう思うと、心の中の靄が晴れるようだった。

「太宰さん、有難う御座います」
「おや、私は何もしていないよ?」
「……太宰さんはわたしの救世主ですね、やっぱり」

 くすりと笑うと、太宰さんは勢いよく布団に顔を伏せた。敦くんは苦笑いをして、鏡花ちゃんはわたし同様何が起きたか判らないという顔だった。太宰さんの耳はよく見ると赤く染まっている。……照れてるのかな?

「本当、泉って狡いよ」
「何でわたしが貶されるんですか」
「普段そんな事云わないのに急にデレるなんて反則だ」
「そんな事を云われても」

 ふぅ、と溜息を吐くと、扉が飛んで行く勢いで開いた。

「泉!」
「ひゃあ!?」
「手前連絡もなしに居なくなるたァどう云う了見だ!?」
「ち、中也さん!? 落ち着いて……」

 医務室に勢いよく入って来たのは中也さんだった。怒り心頭の中也さんをわたしが宥めようとすると、座ったままのわたしの腰にするりと太宰さんが絡みついた。

「中也は私の恋人を奪おうとしてるのかい?」
「あぁ!?」
「二人が話すと本題消えるから止めて下さい」

 太宰さんの手を離してベッドから降りる。中也さんときちんと目線を合わせてから話し出した。

「首領から聞きませんでしたか?」
「嗚呼、聞いたよ。姐さんと交換したってな」
「連絡しなかったのは謝りますけど、わたしより紅葉さんが居た方が其方の戦力になるでしょ?」
「手前も俺にとっちゃ必要だっつの」
「まぁまぁ、今の所は停戦なので会う機会もありますし、ね?」
「チッ。……まァ良い。今の手前は活き活きしてるしな」
「そう見えます?」
「見える。……悔しいけどな」
「あっはは。……またお会いしましょうね、中也さん」
「おう。またな」

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