第12章 トレード希望
数分後。
「落ち着いたか?」
福沢社長に声を掛けられ、わたしはこくりと頷いた。「車に戻りましょう、泉さん」潤一郎くんに云われ、わたし達は四人の乗ってきた車に乗り込んだ。
「ちょっと後部座席狭いですけど、大丈夫ですか?」
「……あの、これ四人乗りでは?」
「まぁ気にしないで下さい。真逆泉さんが居るなんて思わなかったんです」
「う、あの、御免なさい」
わたしは一番小柄なため後部座席の真ん中に、わたしの右隣に潤一郎くんが、左には太宰さんが乗り込んだ。運転席は国木田さん、助手席は社長だった。
「国木田」
「はい?」
「社に戻る前に甘味処へ寄ろう」
「は?」
社長がいきなりそんな事を云い出した所為か、国木田さんはきょとんと目を丸くさせた。
「折角泉が帰って来たんだ。未だ時間はあるし、何か買って帰っても善いだろう」
「ですって、泉さん。何が食べたいですか?」
潤一郎くんが笑顔でわたしにそう問うた。甘味……甘味か……。
「お団子……」
お団子が食べたいです。そう言うと、「意外だな」と国木田さんが前を向いたまま言った。
「お前の事だから餡蜜とか言うのかと」
「みたらし団子好きなんです。お団子なら何でも好きですけど」
「私も団子食べる〜。国木田くぅん買って♡」
太宰さんがわたしの肩に頭を乗せながら国木田さんにお強請りした。何時もよりワントーン高い声はちょっと気味が悪い。
「誰が貴様なんぞに買うか!」
「えぇー酷いなぁ。今回の密会を企画したの私だよ? 功労者なのにさぁ」
「企画? 探偵社からの申請って、太宰さんが云ったんですか?」
確か首領はそう云っていたはずだけど。そう思いながら尋ねると「まぁね」の一言が返ってきた。
「発案は敦くんですよ。敦くんが閃いて、それを太宰さんが密談出来るよう持って行ったんです」
まぁ僕達四人は反対ですけどね。潤一郎くんはそう云った。