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【最遊記】金色の向日葵

第13章 告白


「…ッ、さっさとしろ!」

そう言われて手をキュッと掴まれた雅。さっきの男の様に気持ち悪いと言った感情は生み出されなかった。

「ね…あの…三蔵…」
「…うるせぇ」

そう言いながらも三蔵はさっきいた宿にスタスタともどってくる。フロントで声を掛け話し出した。

「さっき大部屋で1部屋取ったんだが…」
「はい、どうかされましたか?」
「もう1部屋取ってくれ」
「もう1部屋…ですか?」
「あぁ。そうだ。」
「今空いてるのは…シングルが1部屋ですが…」
「構わん」

そういってカードを出す。支払いを済ませて鍵を貰うと雅を連れてその部屋にむかった。

ガチャリ…

重たい扉はゆっくりと開き、雅は三蔵に部屋に押し込まれる形で中に入った。

「…あの…三蔵…?」
「…フッ、どうかしてるな…」
「え?」

ぽつりと呟いた三蔵に振り向きかえる雅。その次の瞬間に雅は腕を引かれ三蔵の腕に抱きすくめられていた。

「え…?!三蔵!?」
「耳元で騒ぐな…」
「離して…っ!!」
「断る」
「なんで…!?」
「黙ってろ…」

びくともしない三蔵の腕の中でどうにかして抜け出そうとした雅。しかしそんな行動を打ち砕くかのように三蔵は耳元でそっと呟いた。

「…少しでいい。大人しくしていろ」

これ程までに優しい声色で、そんな言葉を聞くのは初めてだった。それを聞いた雅はそっと三蔵の背中に腕をまわす。
それから少しして、三蔵はゆっくりと身体を離し、ゆっくりと話し出した。

「俺は…お前がどうして欲しいとかは良く解らん」
「…ぇ?」
「何を望み、どうしたいのかとかもさっぱりだ。」
「……あの、三蔵…」
「俺は…・・俺は、今まで守る存在を作って来ない様にしていた。過去に一度、命に代えても守ると決めた光明三蔵を失ってからは…」
「……三蔵?」
「黙って聞け。俺が俺でいるために。守る存在を作らず、ただ生れて死ぬまで自分の味方であるだけに生きてきた。悟空達の存在も、三仏神に言われたから下僕として連れてきている。どちらにしろ、あいつらは俺が守らなくとも、自身の力で自分の身を守る事は出来る奴らだ。」

三蔵の口から初めて聞く事が沢山あった。しかし、その目はどことなく淋しげで…しかし真っ直ぐに見つめるその目は本心だと手に取る様に解った。
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