第12章 揺れる想い
翌朝、目を覚ました雅は目を疑うかのようにガバッと起き上がった。
「…おせぇよ」
「えっ?あ…嘘、今何時!?」
そういい、慌てふためく雅をクスリと小さく笑った三蔵は煙草を灰皿に押し付けた。
「クス、ばぁか。」
「…ふぇ?」
「しっかり見てみろ」
そう言われて雅は目を擦りながらも時計を見つめた。
「…え?」
「もう少し寝てろ。」
そういう三蔵の言葉を受けながらも目をぱちくりさせた。そう、時計の針はまだ4時半を指し始めた頃だったのだ。
「三蔵…?」
「なんだ?」
「三蔵は寝ないの?」
「……俺はいい。」
「眠れない?」
そう言いながらも雅はゆっくりとベッドから降り、三蔵に近づいた。
「なんだ」
「…誰かが傍に居ると安心するものなんだよ?」
「バカか…時と場合による…ッッ」
そう言いかけた三蔵にふわりと両腕を回して雅は抱き締めた。
「…寝ぼけてんのか…」
「ちゃんと起きてるよ」
「じゃぁ一体何の真似だ。」
「…三蔵が…ッ…寂しそうで泣きそぉだったから…」
「…俺が?…フッ…馬鹿か。何も泣く事は無い。」
そう言いながら三蔵は巻き付いていた雅の腕を緩め、離した。じっと目を見つめられながら三蔵は言葉を続ける。
「泣きそうなのはお前の方じゃねぇか。」
「さ…んぞ…ッッ」
「…何泣いてやがる。」
「…ッッ、泣いてない」
「そうか、ならさっさとそれ、止めやがれ。」
そういわれた雅はグイッと涙をぬぐう。少し離れ、背中を向けながらいる雅の背中を見て三蔵はゆっくり立ち上がり後ろからそっと腕を回した。
「…でもそうだな。たまにはこうして誰かに居て貰うのも悪くないかもな。」
ドクン…ッ
雅の心は一気に跳ね上がる。さっきまで吸っていた煙草の香りが、雅の鼻を擽る。
「さんぞ…ぉ」
「なんだ」
「……」
なにかを言いたげな雅。その空気を突如、予想を反して打ち砕いたのは…
ドンドンドンッッッ!!!!!
勢いよく三蔵の部屋の扉を叩く音だった。
「…チッ」
舌打ちをすると腕を離し、叩かれる扉を開け放ちに向かう三蔵を見送りながら雅は煩いほどの鼓動を落ち着かせるのに必死だった。