第12章 揺れる想い
コンコン…
雅はその扉が開くのをただ待っていた。それでもなかなか開くことはなかった。
「さすがに寝ちゃってるかな…」
そう思いながらも、再度叩いてみる。
すると、時期に重たかったその扉は開いて、中から少し不機嫌そうにも見える三蔵が出てきた。
「……どうした?」
「…あの、」
「なんだ」
「……」
伝えたいことはたくさんあった。それでも言葉がうまく出てこない。
「用がないならさっさと部屋に戻って寝ろ」
「まって!!」
ふいに扉のノブをもって雅は締まる扉を制止した。
「…だから!なんなんだ!」
「一緒に!…・・・三蔵と一緒にいたい…」
そう勢いに任せて雅は思いのすべてをぶつけてしまった。しかし、そのあとの無言が続く。発してしまった言葉は取り戻せない。それがたとえ、本当の気持ちであっても。
「……ッ、ごめん…なさい。部屋戻る…」
「…ハァ、入ってこい」
戻ろうとした雅に、三蔵は諦めたかのように中に入れた。そのあとに何をするでもなく、ただ三蔵はベッドに腰掛ける。立ったままいる雅に三蔵は声をかけた。
「何ぼさっと突っ立ってんだ…立ってるだけなら部屋戻れ」
「座っていい…?」
「…フン、好きにしろ」
そういわれた雅は、三蔵の法衣のかかった椅子をそっと引き、ちょこんと腰かけた。
「それで?」
「え…?」
「何かあってこっちに来たんだろ…なんだ」
「…えと…」
三蔵の問いかけに雅は、どう答えていいか戸惑った。確かにここに来た理由は中に入る時に話した。雅の中で、あれ以上でも以下でもない…そんな状況の中に三蔵からのこの問いかけだったのだ。
「その…三蔵と一緒にいたい…なって」
「悟空はどうした?」
「寝てる…」
「話しは?」
「してきてない…寝ちゃってから来たから…」
「…ハァ、まったく」
「ごめんね?1人で眠りたかったって言っていたのに…」
「…別に、かまわん」
そういうと、ぶっきらぼうにも三蔵はごろりとベッドの上に横になった。
「気が済んだら横のベッドでも、部屋に戻って悟空の横でも、好きに寝ろ。」
「…ありがとう」
その言葉を聞いて三蔵は眠りに入っていく。雅もまた少し寝顔を見つめていたが時期に横のベッドに潜り込み眠りへと入っていった。