第9章 恋心、その灯の揺らめき
色々と見て回っていた時だ。雅の目に不意に目に留まったある1つの物。
「どうしたぁ?」
「あれ…可愛い……」
そういって雅を釘付けにしたものは、1本のネックレスだった。
「わぁ、可愛い!あれ絶対雅に似合うぞ?」
「どれどれ…あぁ、そうですね。トップの宝石はなんでしょうか…」
「うーん。あれは…可愛い…三蔵の髪みたいな金色だ…」
「フザけた事言ってんな。このサル」
そう言っている周りの声は耳にも入らない様子に雅は射的の露店に居るおじさんに声をかけた。
「すみません!1回!!」
「はいよ、1回で3発だからね。しっかり狙って?」
「うん…!!!!」
気を持ち、狙いを定める。それでもなかなか当たらない。狙いを定めるも最後の1発まであたらずに済んでしまった。
「残念!この中から1つ選んでって?!」
そう言われて飴の入ったかごを差し出された雅。仕方なく1つ選ぶ。
「……ッッ!もう1回!!」
「やめとけ」
「だって…」
「いいじゃないですか。たまの雅の我儘位聞いてあげても。」
「さっきの見ても其れが言えるか?」
「……次は!あたるだろうし!!」
「あのちっせぇ的にか?…ッハ」
口角を上げている三蔵を横目に雅はもう1回とお金を支払った。
「頑張るねぇ!」
「雅―――がんばれー!!」
そう応援されながらも雅は必死に狙いを定める。それでも2発、途方もなくどこかへ飛んで行った。
「最後の1発……」
それを見ていた三蔵ははぁっとため息を吐いたかと思うと雅の手から射的の銃を取り上げた。
「……退け」
「三蔵?」
「邪魔だ」
「どうするんですか?」
「これで外したらまたあの小さい飴だろう?」
そう言うと奪い取った銃を構えた。男の人にしては細く、きれいな指がトリガーにかかる。
パンッ
その軽い音は変わらずとも、小さな的のそれを真正面から撃ち落とした。
「お……大当たり――!!」
「すっげー!!三蔵!!すげぇよ!!」
「本当に当てちゃいましたね」
「あんちゃん、いい所彼女にみせれたな!」
「フザけた事言ってんな。殺すぞ」
「まぁまぁ三蔵!」
「はい、これな!!」
そういって男は三蔵に的の代わりに雅が欲しがっていたそれを手渡した。