第7章 宵の悪戯
「何で…?どうして……」
そう呟きながらも三蔵が目を覚まさない内にこの状況から逃げ出したかった。
「えと…」
そうして考えているとグイッと抱き寄せられ三蔵の腕の中に雅の体は墜ちていく。
「…ッッ」
ただ五月蠅い心臓の鼓動。それに加えて三蔵の鼓動が重なって聞こえてくる。
その心地良さに雅は離れられなくなっていた。
スルリ…
何か不思議な違和感が下半身にやってくる。三蔵の足が雅の足を割り、絡まってくる。
「……ッッ…んぞ…」
「……ン」
1つ大きく息を吐くとその腕はゆっくりと解放された。
もどかしさと…恥ずかしさと……
何とも言えない感覚が雅を襲う。
それでも変わらないのは止まらないドキドキと五月蠅い鼓動だった。
こんな感じは初めてで…どうしたらいいものかと戸惑いすら覚えていた。
「はぁぁぁ…なんで…私だよね…入り込んだの…」
そう自己嫌悪にも陥りながら一向に落ち着きを取り戻す気配のない鼓動に耳まで赤くなっていた。
朝食も少し早め摂る事にした。すると八戒や悟浄、悟空も少し遅れてやってきた。
「あれ?雅。誘ってくれたらよかったのに…」
「あ…皆…」
「どうせ三蔵はまだ寝てんだろ?」
「…うん」
「どうか、しましたか?」
「え?あ、何?」
「どうかしましたか?顔が赤いようですけど…」
「ううん?なんでもない…」
そう言いながら雅はフフっと笑って見せた。
(三蔵じゃなかったら…どうなんだろう…)
そうも考えながら食事を済ませる。食べ終わり、部屋の前に来た時だ。
「あのね…?」
「何?」
「ちょっと…皆ごめん…」
そう言うと悟空、八戒、悟浄を自ら抱き締めてみる雅。しかし寝ぼけていたとはいえ三蔵に抱き締められた時の様なドキドキ感は全くなかった。
「どうしました?朝から嬉しいですけど…」
「そうそう、どうせならもう少し…」
そういい腕を回してくる悟浄。しかしそれでもドキドキは起きなかった。
「ん――。何だろう…少し違う…気がする…」
そういってにこりと笑いかけて『ごめんね?急に…』というとまた後でと解れて部屋に入った。