第7章 宵の悪戯
その道中で、八戒は雅に聞いていた。
「ねぇ、雅?」
「何?」
「あなた、三蔵にヒール使いましたか?」
「…ん。無意識だったけど…まさか酔い覚ましも出来るなんて思ってなかったけど…」
「やっぱり…そうですか」
「迷惑…だったのかな…」
「どうして?」
「なんか…解んないけど…」
俯いてしまった雅をみて、八戒は『うーん、』といいながらも続けて聞いた。
「雅は三蔵の事どう思ってますか?」
「どうって?」
「ほら、何というか、好きとか嫌いとか。苦手な感じとか…いろいろあるじゃないですか?」
「そう言うのだったら怖いなって思ってたのがそう感じなくなった。初めはすごく怖い感じだったんお。それでも最近はそうでもなかった。…って言っても初めから怖いっていうか、恐怖は無かったんだけどね?」
フフっと笑う雅をみて、八戒はニコリと微笑み返した。
「雅は恋人とか居ないんですか?」
「居ないよ、何で?」
「成程。」
「八戒は?」
「僕は……居ました。」
そう答える八戒の顔が急にフッとくぐもったのを感じた雅はすぐに謝っていた。
「ごめんなさい…デリケートな事だったかな…」
「いえ。大丈夫です。今でも僕の中では譲れない1歩。他の誰かでは埋められない存在なんです。」
「そっか…そんなに愛されてるんだね…その人…」
「えぇ、すごく。」
そう答える八戒の顔はふわりと和らぎ、温かな物となっていた。こうして買い出しも終わり、3人と別れてから2時間ほどだろうか。すっかりと遅くなってしまった帰宅だった。
「ただいま」
「只今帰りました」
「…あぁ。」
相変わらずぶっきらぼうな返事の三蔵をみて八戒は雅に声を掛け、部屋を出て行った。
「……遅かったな」
「うん、いろいろ見て回って…八戒にも買い物手伝ってもらって…」
「……まぁ、八戒が一緒なら迷ってる事は無いと思ってたがな」
そう言いながらも三蔵は立ち上がり浴室にむかった。
「先に入ってくれてたらよかったのに」
そう雅は思っていた。
しかし、三蔵は浴室で1人になった時…ふと流れるシャワーに打たれながらも考えていた。
「……無事でよかった…」
そうぽつりと人知れず発していた。