第7章 宵の悪戯
「ここ…」
「あ、三蔵…気付いた?」
そう言いながらも急いでコップに水を持ってくる雅。そっと手渡すと三蔵は受け取ろうとしなかった。
「お水…いらない?」
「酔いは無い。」
「え…あ……でも…あんなに飲んで…」
そう言いかけた雅はふと先程の自身の手から溢れる光を思い出した。
「ケガだけじゃないんだ…」
「……フ」
グイッと腕を引き寄せた三蔵は、雅を腕の中に抱きいれた。
「お前の力は酔い覚ましにもなるのか…」
「え…あ…解んない……けど…」
少し慌てたように体を押し戻そうとする雅の力では三蔵を押し戻せはしなかった。
「…悟空が言っていた。」
「ふぇ?」
「お前が俺を怖がってると。」
「えと…怖がってるんじゃなくて…」
「じゃぁ何だ」
「三蔵…いつも怒ってるのかと思って…」
「怒ってる、だと?」
「でも…最近分かったの…意外と三蔵って、不器用なんじゃないかなって…」
「…は?」
「それに凄く優しいんだって…」
「俺が、優しい?」
「うん。」
少し俯いた雅はそのまま三蔵の腕の中で話し出した。
「なんだかんだ言っても、皆の事ちゃんと見ていてくれてる…それに、私の事も…『面どくせぇ』とかいろいろ言ってる割に探しに来てくれたり…」
「放っておいて野垂れ死にされる方が面倒くせぇから。」
そう言いながらそっと腕を緩め、抱きいれていて雅を解放した。
「三蔵?」
「なんだ?」
「今日は…ベッドで寝てね?」
「そうさせてもらう」
そう言いながらもゆっくりと座りなおした。
「……何だ?」
「え?」
「俺の顔に何かついてるのか?」
「ううん?」
「じゃぁ何だ、さっきからじろじろと…」
「…やっぱり、きれいだなって…」
そう切り出した、雅の言葉に三蔵の眉間がピクリと動く。しかし、臆する事なく雅は続けた。
「顔とかじゃないよ?」
「………」
「だってタレ目で、三白眼で…口はいつもむぅってなってるし…」
「言いたい事はそれだけか…」
「…っじゃなくて、髪…」
そう言うとさっきまで合っていた視線はフッと外れ、三蔵の頭上に向けられる。