第6章 勝負
そんな状況に当然ながらも慣れているのだろう。気付けばテーブルの上の食事は綺麗になくなっていた。
「雅…」
「はい?」
「後で少し付き合え。」
「ふぇ?」
「三蔵…まさかあなた」
「…何を考えてる…煙草を買ってきてもらおうと思っただけだ…それの何が悪い…」
「タバコって…三蔵昨日の夜に…」
「いいから…昨日のは悟浄に取られた」
「はっ?!なにいって…」
「何か文句あるか」
その三蔵の視線をもらった悟浄は小さく笑ってはいはいと目を伏せた。
「…フン…」
そうしてお使いを頼まれた雅が出かけたのを見て悟浄は三蔵に問いかけた。
「俺と三蔵っていつから同じタバコ吸うんだっけ?」
「…うるせぇよ…」
「本当に三蔵は雅が好きなんですね…」
「……チっ…勝手に言ってろ」
そういうとカチリと残りのタバコに火をつけて吸い出した。そのままふぅっと煙を噴き上げる。そんな時だ。
「ようよう、お前ら…」
「……お前!!!」
「今日はあの女はいねぇのか?」
「…誰だてめぇ…」
「こいつだよ!今日の相手…」
「ひゃひゃひゃ!!!どんな奴を連れてくるのかと思ったら女みたいなひょろ男と坊主かよ!こりゃあの女は俺がもらったも同然だな!!」
「……あなたですか…雅ことを困らせてるのは…」
「困らせてるんじゃねぇよ。」
「…うるせぇよ」
「あん?何だと?この坊主が…!」
「…」
「黙ってれば…お綺麗な顔してんじゃねぇか…」
そういうのを聞いた悟浄と御供は『はぁ…』とため息をついた。其れもそのはず。三蔵に喧嘩を売ってしまったと感じていたからだった。
「……お前らにはあいつは渡さねぇよ」
「いんや!!俺がもらう。不自由はさせねぇぜ?お前も何なら……」
「死にてぇのか…」
「三蔵、落ち着いて!!とりあえずその怒りは勝負まで取っておきましょう?」
そう八戒に諭されて三蔵は出しかけた短銃を懐にしまった。さすがに一般人に対して『それ』を打ち鳴らすのはまずいと思ったのだろう。それでも怒りまで抑えようとはしなかった。
「ふん、そんなこと言ってられるのも今のうちだぜ?」
そう言い残して大男は去っていった。