第5章 トラブル
「あ、居た居た!八戒ぃぃ」
バタバタと走って来たのは悟空だった。八戒だけを追ってきた筈の悟空の目には雅が映った。その瞬間に目はキラキラとし、八戒ではなく雅の前に向かっていった。
「なぁな!!雅!俺今から散歩に行くんだけどさ!雅はどうする?」
「んー。そうだなぁ。」
「悟空?悟浄はどうしてますか?」
「もう少ししたらさっき見かけたお姉ちゃんの所に行くとか言ってた!」
「あぁ、そうですか?」
「なぁ雅!行こうぜ?俺もぉ腹減って死にそうだよぉぅ!」
甘えたように雅に擦り寄りを見せる悟空に負けたかのように雅は、八戒に『行ってきます』と伝えて悟空と一緒に宿を出た。その足で露店を巡る。
見てる間に食べ物で両手は埋まっていった…
「それからねぇ、あ!おじさん!さあれから豚まんのおっきい奴!5個な!」
満面の笑みで悟空は買い込んでいく。この中に雅の食べる分など1つも予定されていなかった。
「ねぇ、悟空?少し食べて量減らさない?じゃないとこれ以上はさすがに持ちきれない…」
「あ、わりぃ!そうだよな、雅…女の子だもんな。」
ひょいっと雅の両手から荷物を受け取り、木陰に座ると悟空はまるでピクニックのようにウキウキしながら買った豚まんを食べ始めた。
「はぁ、雅もこえ、ふうは?」
「ごめん、悟空…何言ってるか…」
そう言いかけた時だ。悟空は右手に残る豚まんを口に頬張りながらも新たな豚まんを袋から出した。
「悟空?誰も取らないから…」
「…ンク、はぁぁぁ、ほら!雅!!!旨いぞ!」
そう言い差し出してきた。そっと悟空の手から受けとるとそれは、まだ温かく軽く湯気が出ていた。
「じゃぁ、…でもいいの?」
「あぁ!一人でも旨いけど、きっと雅と一緒に食べた方がもっと旨いと思うからさ!一緒に食お?」
そう言われ、受け取った豚まんを頬張った瞬間に雅の目からは涙が溢れた。
「えっ、待った!雅っっ!?何で泣く?泣くほど不味かった!?」
さっきまでのコロコロした表情の悟空とはほど遠く一気に焦り、オロオロし出していた。