第17章 意地悪な唇
「三蔵?」
「嘘つくんじゃねぇよ…」
そう言うとそっと抱き寄せた三蔵。法衣で包みこむ様にして抱き締めていると心なしか体を押し戻そうとする雅の手があった。
「どうした?」
「だって…みんな寝てるし…」
「ほぅ、余裕…という訳か」
「え?」
「俺の腕の中で他の男の事を考えるとはな」
「ちょ…ッ!!そうじゃなくて…」
そう反論しようとする雅の頬を包み込んだ三蔵は視線を自身の物と絡み付かせる。
「他の奴らがどう思おうとかまわん。」
「だけどそれじゃ起こしちゃう…!」
「起きたら見せつけてやればいい…」
そう言うと三蔵は腰に腕を回してグッと自身に雅の体を引き寄せた。
「今の内だけだ…そうやっていられるのも…」
「さ…んぞ…?」
ゆっくりと三蔵の唇が触れ合ってくる。重なり合い、離れようとしない。
チュク…ッッ…クチュ…
静かな夜、雅の耳元に五月蠅いほどに響くのは三蔵が与えてくれるキスの水音と、熱さだけだった。
「さん…ッッ」
そう名前を呼ぶ雅の唇から自身のそれを離さない様にしていた三蔵は、舌を割り入れた。
ン…チュク…
…・・ンフゥ…
吐息が漏れ、ジープに凭れかかる雅をグっと抱き締めたまま、熱い三蔵の思いが溢れ流れ込んでくる…
「ン…ンァ」
その悟空の寝言でドクリと胸を高鳴らせた雅。ようやくの思いで三蔵の体を押し戻すと息を上げながら話し出す。
「悟空…起きちゃう…」
「知るか…雅が声をあげなければ問題ない」
「そんな事言っても…ッン」
そう返事をする雅の声を聴きながらも三蔵は雅の首筋に唇を這わせた。
「ンァ…三蔵…」
「……ッッ」
名前を呼ばれた次の瞬間…ゆっくりと三蔵は体を離した。
「…フ…なんだかんだと言っても、雅のその声を他の奴に聞かせるのは気に入らんな」
「え?」
「その代わり、次の町に着いた夜は覚悟しておけ…」
「覚悟って…」
「言わんでも解るだろうが…」
そう言い残して三蔵はジープの助手席に乗り込み、顔を伏せる。
「雅も、とっとと寝ろ。」
「……ッッ」
三蔵が寄越した熱がまだ残ったまま、雅は後部座席に座り熱交と必死に瞼を閉じた。