第15章 ★ 熱き忠告
三蔵の元に近寄った雅は少し照れくさそうに話し出した。
「ねぇ、三蔵?」
「なんだ」
「どう?似合う?」
「似合うも似合わんも切れた髪はもどらねぇんだ。」
「三蔵ぉ、もう少し言い方あんじゃね?」
あきれ顔の悟浄に乗っかる様に、悟空は雅の前まで来ると満面の笑みで目を合わせる。
「俺は好きだぞ?この雅の髪も!!長いのも良かったけど短いのも似合う!!」
「ありがとう、悟空」
「…フン、誰も似合ってないとは言ってない。」
「言ってたみたいなもんじゃんか!!」
「うるせぇ、サル」
椅子の周りの片付けをしていた八戒は思い出したかのように話し出した。
「そう言えば…さっき雅と買い物に行ってる時に面白い事があったんですよ?」
「なになに?!大食い大会とか?」
「残念ですが違います。実は、僕と雅、行く先々で新婚さんに間違えられたんですよ」
「あ、そうそう!!雑貨屋さんでも、粉屋さんでも…いろんな所で『新婚さんかい?』とか、『次買う時には旦那に買って貰えよ?』とか…!!ね!」
「えぇ、なんだかそれを聞いていたら僕も嬉しくなっちゃって…」
「否定しなかったのか?」
「ここで生涯暮らす訳でもなく、今日には発ちますし。だからこれと言っての否定はしてきていないです。」
あっけらかんと話す八戒と雅。
「でも、八戒には申し訳なかったなって…」
「え?」
「恋人ならまだしも、あえて新婚さんに間違えられちゃって…」
「恋人ならって…」
少し離れた所で何やら不穏な空気が充満し出している事に気付いた時にはもう遅かった。
「……八戒」
「はい?」
そうひと言名前を呼ぶと、三蔵は懐から短銃を出すと同時に八戒めがけて銃口を向けた。
「さ…三蔵?」
「新婚さん…だぁ?」
「えぇ。」
「ほう、それで否定しなかったと。」
「否定する必要ないかと思いまして…」
「どういう事だ?」
「だって、僕は今の所フリーですし?それに雅もフリーでしょう?」
「私は…その…」
「そうか、女なら手当たり次第の悟浄に似てきたという訳か…」
「やだなぁ、悟浄と一緒にしないでくださいよ…」