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後輩《テニスの王子様 手塚国光》

第2章 へそ曲がりな後輩


手塚国光と言う男は、一度こうと決めたら自分の信条を曲げない男だ。
それは良い意味でも、悪い意味でも。


「手塚〜ごめんってば〜」

「別に、先輩が謝ることではありませんから、気になさらないで下さい」

すっかりご機嫌斜めな後輩兼彼氏の眉間の皺は深い。

事の発端はこうだ。
手塚の家で勉強会をした際、うっかり持ち帰り忘れた辞書を昼休みを利用して手塚が高等部2年の教室まで届けてくれたのだ。

もちろん、手塚は高等部でも有名なので周りの無遠慮な視線に晒された。更には運の悪い事に、うちのクラスのお調子者に見つかり、揶揄い交じりに囃し立てられた事で私は恥ずかしくなり、親切で届けてくれた手塚を無理矢理追い返す羽目になったのだ。

で、その日の放課後、部活終わり。
いつもの通り待ち合わせの校門に行くと、完全にへそを曲げた手塚国光が眉間に深々と皺を刻んで待っていた。

「本当に怒ってない…?」

手塚の空いてる左手に遠慮がちに手を繋ぐ。

「あ、アイツ等にはきちんと鉄拳制裁しといたから!」

アイツ等とは、もちろん囃し立てた男子達である。
後輩の手塚の方がよっぽど大人で紳士なんだから困ったものだ…。

「先輩、俺は…」

手塚は少し悩んだように言い淀んで、それからやはり何でもないと口を閉ざした。

「も〜何でもない人はそんな顔しないよ!」


寄り道しよ?と提案したのは私。
帰り道の途中にある公園。
ブランコとベンチしかない、殺風景で人気の無いそこで手塚とベンチに並んで座った。

「手塚、言いたい事があるなら言ってよ」

モヤモヤを残したまま帰ったら私、絶対に夜眠れなくなる。

「手塚は私の表情わかりやすいとか言うけど、手塚のソレ。不機嫌ゲージも結構わかりやすいんだからね」

手塚の眉間を指差す。
言われたい放題の手塚は、観念したのか、眉間にいたずらする私の手を取りそっと握った。



「俺は…先輩にとって恥ずかしくない男でありたいんです」

「俺は年下で、まだ中学生ですから…先輩が恥ずかしいと思ってるなら、俺は傍に居ないほうが良いのではないかと…」


ぱちくり。
つまり、その、自分が年下である事を結構なコンプレックスとして抱えている…と言う事だろうか。


「俺が先輩と対等でいられるのは、テニスをする時ぐらいですから…」
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