第5章 心配性な後輩
「隙あり…っ!」
無防備な国光の首筋にちぅっと吸い付くと、小さな痛みとともに紅い跡を残した。
「ふふ、油断大敵だよ、国光君」
国光の白い首筋に鮮やかな紅のキスマーク。
堅物の国光の首筋にキスマーク。
そのギャップに、明日はジャージが手放せないな…なんて想像して一人大人気なくほくそ笑む。
無言で首筋を抑える国光はと言うと、暫く考えを巡らせた後。
眉間に、シワ。
いやいやいやいやいや。
「お、おあいこだからね、国光、おあいこ。目には目を、歯には歯を、キスにはキスをってね。ハンムラビ法典ってやつ、国光なら知ってるよね?」
してやったりと浮かれていたも、不穏な気配を察して慌てて取り繕うように言い訳を並べ立てる。これは何とか気を鎮めなければ、家の周りをしこたま走らされるかもーーー!
「あ、そーだ!私お風呂入ってこよーかなー!汗でベタベタだから!国光は適当にくつろいでていいよ!!ほら、国光の好きな旅番組!20時からだったよね!今日はマッターホルン特集だったよ!!ヨーロレイヒー!スイスは死ぬまでに一回くらい行ってみたいなぁ………だから、あの、離して、国光、その、立ち上がれないんだけど、国光君、助けて、ごめんなさいするから、許して…」
国光の膝の上でがっちりと腰をホールドされて、全く身体の自由がきかない現実に途方も無い絶望感が押し寄せてくる。
国光は慌てふためく年上のに対して、何処か楽しそうで。
「先輩には、キスマークとやらの付け方をたっぷりご教授頂きましょうか…」
長く艷やかなの髪に指を絡ませ、生意気な後輩はやっぱり不敵に笑う。
予想外のお仕置きに、私はハンムラビ法典の恐ろしさを呪った。